外国人雇用

建設業における外国人受け入れについて│特定技能1号・2号の要件や対象業種について解説

高野国際行政書士事務所/外国人材紹介エージェント Global Village
代表 高野 大輔(たかの だいすけ)

商社とメーカーで海外営業15年を経て、地元茨城県で国際行政書士として起業。人手不足という地域課題を解決するべく、茨城特定技能サポートセンターを運営。外国人実習雇用士。

高野 

建設業で人材不足にお困りなら、「特定技能」という在留資格を利用する方法があります。いわゆる、外国人労働者の雇用です。特定技能1号・2号は、他の在留資格に比べて日本人の配偶者や留学などの条件がなく、比較的、取得しやすい在留資格と言われています。

特に、特定技能2号では外国人労働者が実質無期限で日本に在留できるため、建設業界としても注目すべき在留資格のひとつです。

今回の記事では、建設業で外国人を受け入れられる在留資格「特定技能」1号と2号について、その要件と対象業種をくわしく解説します。

建設業界の現状について

建設業では長い間「3K」のイメージで人材確保に苦戦していましたが、2013年頃から建設業全体の就業者数は増加しています。最近では「新3K」(かっこいい・稼げる・結構モテる)も打ち出し、採用時にも工夫をしているからでしょう。

しかしながら、建築・土木・測量技術者など一部の職種では、依然として慢性的な人材不足が続いています。

業界の人手不足

ここ数年、建設業界では型わく工、左官、鉄筋工などの「職人系」の求人数が毎月増えています。国土交通省では2019年~2023年の4年間で、約21万人の人材不足になると見込んでいます。

建設業の深刻な人手不足の要因の1つは、若手の離職率の高さです。特に高卒の離職率がとても高く、大卒の3年以内が27.8%なのに対し、高卒は45.3%です。この離職率の高さにはさまざまな要因が挙げられますが、その1つとして、週休2日制が浸透していないことが考えられます。週休2日制ではない場合、家族や友人と休みを合わせることが難しく、特に高卒の若い人はその点をデメリットと考えます。

他にも、長時間労働や労働にみあった給与ではない、などが要因として考えられます。これらを改善するには、福利厚生や人事制度を見直すことが早道です。

技術者・技能者の高齢化

もう一つの建設業の人手不足の要因として、技術者・技能者の高齢化があります。建設業の就業者の数は1997年の685万人がピークで、その後、2010年には500万人をきりました。また、2000年頃から29歳以下の若手就業者の数が格段に減り始め、逆に、建設技能者(土木など直接的な作業を行う者)と建設技術者(施工管理を行う者)の3割強が55歳以上と、深刻な高齢化が進みました。

高い技術・技能を持つ労働者が担い手に引き継がれないということは、次世代にその技術・技能が利用できないということです。自然災害の多いこの日本で、技術・技能者の不足は国として最低限のインフラも守れなくなるリスクとなります。

特定技能「建設」とは

「特定技能」という比較的新しい在留資格は、2019年4月に出入国管理法(入管法)の一部が改正され(平成30年法律第102号)、誕生しました。特定技能に申請して受理されれば、経営者は新たにベトナムやフィリピンなどからの外国人労働者を雇えます。

在留資格「特定技能」は全14種の業種で利用が可能であり、建設業もそのひとつです。特定技能「建設業」については国土交通省が管轄しており、在留資格「特定技能」による建設業界の人材不足の緩和や生産性向上を期待しています。

特定技能という在留資格が法務省・出入国在留管理庁で承認されると、日本に滞在できるビザ(査証)が外務省により発給できるという仕組みになります。特定技能はよく「技能実習」と間違えられますが、技能実習はあくまで他国と日本との国際的な研修制度のため、技能実習自体が在留資格とはなりません。

ただし、技能実習2号を良好に修了した外国人労働者は、技能実習を特定技能1号における実務試験が同じ分野の場合は免除となります。

例)技能実習の分野が建設⇒建設の特定分野試験=免除になる

技能実習の分野が建設⇒宿泊業の特定分野=免除にならない

建設業と特定技能1号・2号について

在留資格「特定技能」には1号・2号の2種類があります。建設業は深刻な人材不足が懸念される業界のため、1号と2号の両方で申請が可能です。特定技能1号には建設業以外に介護・ビルクリーニング・外食・宿泊などの全13種の業種が含まれ、2号では建設業以外に造船・船舶工業の業種があります。

特定技能1号・2号では、含む業種以外に以下のような違いがあります。

特定技能1号

建設分野の特定技能1号は、外国人労働者が最大5年間まで日本に在留できる資格です。(1年、6か月または4ヶ月毎で更新手続きが必要です)建設分野の特定1号では最もベトナムからの上入れが多く、次いで中国・フィリピン・インドネシアなどから多数の外国人を受け入れています。特定1号には受入れ可能な国は限定されていませんが、悪質なブローカーなどが横行することから、実際は二国間協定※を結ぶ9か国に限定されることが多いです。

※2021年現在、日本はフィリピン、カンボジア、ネパール、ミャンマー、モンゴル、スリランカ、インドネシア、ベトナム、バングラデシュ、ウズベキスタン、パキスタン、タイと結んでいます。

特定技能1号に申請するには、以下を証明する試験に合格しなければなりません。しかし、特定技能1号のレベルは「一定以上」となっており、しっかり準備をすれば多くの人が合格できる水準です。

  • ①基礎的な日本語の能力があること(国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験N4以上)
  • ②建設分野での一定以上の能力を持つこと(建設分野 特定技能1号評価試験など)

特定技能1号では家族の帯同(同伴)は認められません。特定技能1号で外国人労働者を受け入れる事業所は、外国人を受け入れる際に支援計画を作成し、入国前から滞在中まで生活に必要な手続きなどきめ細かい支援をする必要があります。また、外国人をはじめて受け入れる事業所は「特定技能所属機関」※1として出入国在留管理庁の審査を受けるか、または認可を受けた「登録支援機関」※2

※1特定技能所属機関⇒特定技能の在留資格で外国人労働者を受け入れる企業のこと

※2登録支援機関⇒出入国在留管理庁の認可を受けた、社会保険労務士などの外国人受入サポートを行っている民間企業

参照URL:特定技能ガイドブック P13

更新と最大在留可能期間 1年、6か月または4ヶ月毎で最大5年間
試験
  • 基礎的な日本語
  • 建設業の一定レベルの実務
家族の帯同 不可
受入れ事業者の支援 必要

出入国在留管理庁では、建設分野での特定技能1号の発行上限を、2019年~2024年の5年間で合計最大40,000人を見込んでいます。

特定技能2号

特定技能2号は「熟練した」実務レベルが求められる在留資格です。特定技能2号へ新規で申請することはできず、1号に合格したあとで2号への移行が可能となります。2号では1号のように在留期間の更新制限がなくなり(3年、1年または6か月毎の更新手続きは必要)、配偶者・子といった家族の同伴も認められます。

更新と最大在留可能期間 3年、1年または6ヶ月毎で最大5年間
試験
  • 建設業の熟練レベルの実務

※日本語試験はなし

家族の帯同
受入れ事業者の支援 不要

特定技能2号を保持する外国人は、日本語能力や日本での生活に問題ないと認識されています。そのため、特定1号とは違い、受け入れる事業者は特に支援計画の作成・実施をする必要はありません。

特定技能2号への移行について

日本で技能実習2号を良好に修了している外国人労働者は、特定技能1号の申請に際して実務試験を免除されます。(技能実習1号では免除されません)ただし、技能実習2号は特定技能2号に直接移行はできません。技能実習2号から特定技能1号に切り替える場合、母国へ一時帰国する必要はなく、日本でそのまま手続きが可能です。

また、技能実習と特定技能の職種の分野は完全に一致するわけではないので、注意が必要です。

例えば、技能実習に「さく井」という職種はありますが、特定技能には「さく井」がありません。そのため、技能実習2号から特定技能1号へと切り替えをする場合は、技能実習2号の建設分野の職種と特定分野1号の職種をマッチさせる必要があります。

参照URL:技能実習2号移行対象職種と特定技能1号における分野(業務区分)との関係 P10

一方、特定技能1号から特定技能2号への切り替えは可能です。特定技能1号の実務試験と特定技能2号の実務試験はレベルが異なるため、2号へ移行するのであれば2号の実務試験に合格する必要があります。その際、日本語の試験は免除されます。

特定技能「建設」の対象職種・雇用形態

建設業事業主が特定技能1号または2号の外国人を受け入れる場合、雇用のパターンには、以下の3つがあります。

  1. 国内でもともと特定技能試験に合格した外国人を雇用
  2. 日本に別の在留資格で滞在し、今回はじめて特定技能で働こうとする外国人を雇用
  3. 海外から特定技能試験に合格した外国人を雇用

いずれの場合も、まずは該当の外国人と雇用契約※を結び、就労開始したあとに特定技能の申請や切り替えを行います。詳細は、出入国在留管理庁による特定技能ガイドブックのP4~P5をご覧ください。

参照URL:特定技能ガイドブック

※雇用契約は外国人の母国語で記載されている必要があります。

特定技能「建設」の対象職種

特定技能の建設分野では、以下の18種類の職種で受入れが可能です。各職種ではそれぞれ別の実務試験が実施されます。例えば、左官での職種で外国人を受け入れるには、特定技能「建設」の「左官」試験に合格した外国人であれば採用できます。

  • 型枠施工
  • 左官
  • コンクリート圧送
  • トンネル推進工
  • 建設機械施工
  • 土工
  • 屋根ふき
  • 電気通信
  • 鉄筋施工
  • 鉄筋継手
  • 内装仕上げ /表装
  • とび
  • 建築大工
  • 配管
  • 建築板金
  • 保温保冷
  • 吹付ウレタン断熱
  • 海洋土木工

特定技能「建設」の雇用形態

特定技能の建設業分野では、直接雇用のみ認められています。そのため、派遣会社を通じて雇用することは法律で禁じられています。また、外国人労働者を雇用する受入れ事業所は、以下の項目を守る義務があります。

  • 外国人労働者の給与を同じ労働をする日本人と同水準、またはそれ以上にすること
  • 外国人労働者と交わした契約をしっかりと履行すること
  • 受け入れ時には、出入国在留管理庁およびハローワークへ各種届出をする

上記に加え、特定技能1号で外国人を受け入れる際は支援計画を作成し、受入れ前のオンラインなどでのオリエンテーションや手続き同行などを実施する必要があります。

建設キャリアアップシステムとは

建設業で安心して外国人などの労働者に働いてもらうには、経営者が建設キャリアアップシステムの存在を知っておくべきでしょう。略してCCUS(Construction Career Up System)とも呼ばれる本システムは、建設業従事者の資格・社会保険加入状況などを登録するデータバンクで、利用する建築業者はさまざまな便利機能が使えます。

国と建築業界団体がCCUSを導入した目的の一つに、建設業界で働く労働者のキャリアアップの推進と労働環境の改善があります。CCUSのデータから、事業者は将来的な建築技能・技術者の正確な数や不足数を把握できます。また、CCUSでは「スキルに見える化」「工事完了後の退出状況の管理」などの高機能システムを年間1万円程度で利用できるため、うまく活用できれば事業者に大きなメリットをもたらします。

しかしながら2021年7月現在、CCUSの登録事業者数は12万6千件(累計)とまだ全国的な登録には至っていません。一部では「CCUSの手続きの方法がわかりづらい」という声もあり、CCUSの存在自体をまだ知らない建設事業者もいるようです。

参照URL:建設キャリアアップシステム:ホーム

建設業の許可

そもそもですが、建設業として許可を得るには建設業法という法律に基づいた「建設業許可」が必要です。外国人労働者を受け入れる前に、自らの事業所が建設業許可を取得しているかを確認しましょう。ただし、以下に該当する「軽微」な事業の場合、建設業許可は必要ありません。

<建築一式工事>

  • 工事1件の請負代金の額が1,500万円未満の工事または延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事

<建築一式工事以外>

  • 工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事

※各材料費込み

上位に該当しない場合、大工工事、左官工事などの職種ごとに建設業許可をとる必要があります。建設業許可は、許可を受けようとする行政庁に「許可申請書」と「添付書類」と「登録免許税」を提出し手続きします。

国土交通省大臣許可の場合(約120日必要) 都道府県知事許可の場合(約45日必要)
①一般建設業許可または特定建設業許可

15万円

②一般建設業許可および特定建設業許可

30万円

①一般建設業許可または特定建設業許可

9万円

②一般建設業許可および特定建設業許可

18万円

JAC建設技能人材機構

JAC建設技能人材機構は、建設業者が円滑に外国人を受け入れるサポートや建設業者の技能評価を目的に平成31年(2019年)に新設された団体です。建設業者が特定技能で外国人労働者を受け入れる場合、このJACに必ず加入しなければいけません。ただし、以下のような業種ごとの団体に加盟している建設業者は、JACに加盟することなく特定技能での外国人受け入れが可能です。

(例)※抜粋

  • 型枠施工:(一社)日本型枠工事業協会

  • 左官:(一社)日本左官業組合連合会

  • コンクリート圧送:(一社)全国コンクリート圧送事業団体連合会 など

特定技能所属機関の注意点

「特定技能」の在留資格で外国人を雇う事業所は、「特定技能所属機関」(略して特定所属機関と言われることもあります)と呼ばれます。特定技能所属機関には、さまざまな条件があります。建設業者がはじめて特定技能所属機関になろうとするのであれば、以下の条件を満たしているかを確認しましょう。

  1. 建設業許可を取得
  2. 一般社団法人建設技能人材機構への加入
  3. 受入れ建設企業単位での受入れ人数枠の設定
  4. 国土交通大臣による「建設特定技能受入計画」の認定
  5. 建設キャリアアップシステムへの事業者登録
  6. 国土交通省が行う必要な調査などの協力

特定技能「建設」に関する相談は専門家へ

特定技能での外国人受け入れは、以前の在留資格よりはハードルは低いものの、本業を行いながら受入れ業務も同時にこなすのは至難の業です。外国人受け入れに関わるすべての業務、または一部の業務は出入国在留管理庁に認可された「登録支援機関」や行政書士事務所がお手伝いできます。

じぶんひとりで準備をすると、書類作成の不備や思わぬトラブルを引き起こす可能性もあります。リスクヘッジのためにも、事前に専門家に相談することをおすすめします。

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